はじめに
こんにちは!元警察官トレーナーのいってつです!
直近3回に渡ってローファットダイエットのカロリーのPFCバランスと注意点を解説しました。
今回からはローファットダイエットのは真逆のダイエットの「ケトジェニックダイエット」について解説します!
「ケトジェニックって何?」「どんな仕組みでエネルギーになるの?」が分かる記事になっているので最後までご覧ください!
ケトジェニックダイエットとは?
ケトジェニックダイエットとは、簡単に言えば糖質を摂らずに脂質をエネルギー源とする
ダイエット方法で、糖質制限ダイエットの一つです。脂質を控えて糖質を主なエネルギーにするローファットダイエットとは正反対ですね。
そしてケトジェニックダイエットのケトジェニックとは、脂肪からつくられる「ケトン体」というものを利用してエネルギーにすることに由来します。
ここでダイエットや健康について調べた方の中には
糖質摂らないのって逆にダイエットや健康に悪いんじゃないの?
と思った方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、このダイエット方法の肝となる「ケトン体」について次項から解説しましょう!
ケトン体って何なの?
「ケトン体」は体内でエネルギーにできる糖質が減少した際に、代わりにエネルギーをつくりだす中間代謝産物(物質の化学反応の途中で生産されるもの)です。
何も食べなくても数時間を越え、数日間生きることが出来るのもこのケトン体のおかげです。
単純に「糖質がない時に、代わりにエネルギーをつくるためのもの」という認識で大丈夫です!
TCAサイクルの仕組みとATP合成
ケトン体が何なのかを解説する前に、その舞台となる「TCA回路(クエン酸回路)」について軽く説明します。
主食を糖質とした場合
①糖質をブドウ糖に分解する
②ブドウ糖をピルビン酸に分解する
③乳酸と(図には載せていませんが)ATP(いわゆるエネルギー)をつくる
という「解糖系」でエネルギーであるATPを合成しますが、TCAサイクルはいわばその続きで、細胞内のミトコンドリア内で起こります。
TCAサイクルとは、図のような化学変化のサイクルのことで、「ピルビン酸」から生み出した「アセチルCoA」と「オキサロ酢酸」から様々な物質への合成を繰り返します。
その過程で「NADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」などの補酵素が副産されて、それらが「酸化的リン酸化」を経てATPを生み出すという仕組みです。
TCAサイクル自体にATPを合成する仕組みがあるわけではありません(微量は生み出す)。
少し難しくなりましたが、
ピルビン酸からつくったアセチルCoAとオキサロ酢酸から、
化学反応をサイクルしてエネルギーの原料をつくるのがTCAサイクル!
と覚えてください!
ケトン体の役割
では、ケトン体とTCAサイクルにはどんな関係性があるのでしょうか?
結論から申し上げると、
ピルビン酸の代わりにアセチルCoAとオキサロ酢酸をつくるのが役割です!
ではいよいよ、ケトン体がどうやってつくられて、どうやってエネルギーになるのかを解説していきます。
ケトン体がエネルギーになるまで
先ほど説明した通り、ケトン体は体内の糖質がなくなり、「他の方法」でエネルギーを生み出さなければいけない時に生成されます。
「他の方法」の主な内容としては、
①食事のタンパク質や筋肉を分解してアミノ酸をエネルギーにする(糖新生)
②食事の脂質や体脂肪を分解した脂肪酸をエネルギーにする(β酸化)
の2つです。このうち、ケトン体の生成に繋がるのは②のβ酸化です。
β酸化からケトン体へ
こちらの記事で解説した通り、脂肪はβ酸化を経てアセチルCoAになります。
さっき聞いたやつだ!
そう、TCAサイクルを回すために、本来ピルビン酸から生み出されるアセチルCoAが脂肪から確保できるんです!ケトジェニックダイエットにおいて、糖質を摂らずに脂質を摂る理由はこのためです。じゃあこれでTCAサイクルが回せる…と言うとまだ問題があります。
そう、オキサロ酢酸がないんです。β酸化時点ではオキサロ酢酸が合成されないので、TCAサイクルを回してATPをつくれません。そこで活躍するのが体内の万(よろず)屋こと肝臓です。
ケトン体からTCAサイクルへ
①肝臓はβ酸化によりたくさん生まれたアセチルCoAは、血液に入ることが出来ないのでケトン体に変えられて血中を流れていきます。
②やがてエネルギーを必要とする脳や筋肉にたどり着いたケトン体は、酵素により再びアセチルCoAになると同時に「コハク酸」を生み出します。
③上の図の通り、コハク酸はフマル酸→リンゴ酸→コハク酸を経てオキサロ酢酸に合成されるので、TCAサイクルを再開することが可能になる。
という仕組みで、ケトン体が糖の代わりのエネルギーになってくれるわけです!
先ほどの図を手直しすると
という風になります!
なお、②の酵素は筋肉により多く存在するので、元々筋肉量が多い方はケトジェニックダイエットの効果が大きいとされています。
特に手足の筋肉量が多い場合はより有効と言われています!
ケトジェニックダイエットは何故痩せる?
ここまでケトン体についてざっくりと解説して参りましたが、
ケトン体をエネルギーにするケトジェニックダイエットは何故痩せるのでしょうか?
体脂肪の合成を抑制できる
脂肪をたくさん摂取していると、何となく体脂肪が増えてしまいそうな感じがありますよね…!しかしそれは糖質でも同じことで、体脂肪である中性脂肪は脂肪酸と糖質であるグリセロールを組み合わせることでできるものです。
逆に捉えれば、糖質か脂質、どちらかの摂取量を健康上必要な最低ラインに抑えられれば摂取した食べ物からの体脂肪合成は抑制しやすくなる…ってコト!?です。
体内のグリコーゲンを消費できる
ケトジェニックダイエットの特徴として、肝臓や筋肉に貯蔵している糖質「グリコーゲン」を上手く消費できるという点があります。このグリコーゲンは筋肉であれば運動で、肝臓であれば摂取カロリーが低い状態で消費されていきます。
そして、肝臓のグリコーゲンが減ってきている状態であれば体は体脂肪を燃やしてエネルギーにしやすくなります。
一方、グリコーゲンは糖質の摂取によって補給されるので、糖質の摂取割合が多い場合はカロリーが低くても、ある程度グリコーゲンが補充されていきます。逆に、糖質をあまり摂らないケトジェニックダイエットではグリコーゲンがほとんど補給されないので、肝臓のグリコーゲンが減りやすく、体脂肪減少のスイッチも入りやすくなるのです。
ただし、グリコーゲンが補充されにくいということは高強度の運動パフォーマンスも下がりやすいので、ローファットダイエットに比べると運動による消費カロリーの向上や筋肉量の維持は難しくなると言えます。
運動強度はプレワークアウトドリンク(トレーニング中のドリンク)にアミノ酸を入れたり、クレアチンを摂取して維持しましょう!
体重がスッと落ちる
ケトジェニックダイエットを開始すると、体重が1kgほどいきなり落ちる現象が起こります。これは、先ほど説明したグリコーゲンの消費に関係している現象で、体内に貯まっていたグリコーゲンと同時に水分が抜けることで体重が落ちるのです。糖質1gにつき3gの水分を取り込むとされています。
あくまで落ちるのは水分なので、体脂肪が減ったわけではありませんが、体重計に乗ってスッと体重が落ちているとモチベーションになる方も多いと思います!
逆にケトジェニックダイエットを終了して糖質の摂取を再開すると、今度はグリコーゲンと一緒に貯まった水分が体重を増やすので、こちらは脂肪ではないこと認識して慌てないようにしましょう!
たかがダイエットです!ポジティブシンキングでいきましょう!
もちろん注意点もあります!
ケトジェニックダイエットは記事を書いている僕も何度か試したことがあり、
毎回確かな減量効果を実感しています!
が、楽じゃない点、健康面で気を付けなければいけない点も存在します。
そこで次回はローファットダイエットの実践にあたっての注意点やPFCバランスについて解説しますので、どうぞお楽しみに!
まとめ
今回はケトジェニックダイエットにおける「ケトン体」とそのエネルギー機構である「TCAサイクル」について解説しました!
まとめると
①ケトジェニックダイエットとは、糖質の代わりに脂質をエネルギーにするダイエットのこと。
②TCAサイクルは化学反応をサイクルしながら、エネルギーの原料になるNADHなどの補酵素を生み出す仕組みであり、主にピルビン酸から合成されるアセチルCoAとオキサロ酢酸が必要になる。
③ケトン体は、TCAサイクルにおいて糖質から生み出されるピルビン酸の代わりをする。
④ケトン体は、脂肪をβ酸化して出来るアセチルCoAを使って肝臓でつくられる。血中を流れて脳や筋肉で再びアセチルCoAになると同時にコハク酸を生み出すことでTCAサイクルを回すことができる。
⑤ケトジェニックダイエットでは、糖質を摂取しない分体脂肪の合成を抑制し、体内のグリコーゲンを上手く消費していくことで体脂肪の燃焼を促進できる他、抜けたグリコーゲン分体重が減りやすい。ただし運動強度が下がりやすい点には注意
以上の通りです!
次回はケトジェニックダイエットの特徴や注意点、PFCバランスの計算方法をお届けします!最後まで読んでいただきありがとうございました!
それでは良いトレ日を!